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甲斐武田氏の終焉

信長は、勝頼自刃の時には国境すら越えておらず岩村城に滞在していた。やがて、浪合に進出していた信長の元に勝頼・信勝父子の首が届いたのは3月14日のことであった。

3月16日には武田信豊が家臣の下曽根覚雲斎(信恒)に背かれて殺され、小山田信茂も「主君を裏切った」と言う理由で甲斐善光寺で処刑された。依田信蕃も信長の命により処刑されそうになったが、武田氏の人材を求めていた徳川家康は彼を逃がし、信蕃は本能寺の変後、空白地帯となった信濃・甲斐に家康を手引きし、その占領に貢献した。他にも武川衆や後の徳川四奉行といった多くの人材が旧武田家臣で徳川氏に帰参していた成瀬正一を頼り、難を逃れている。

信玄の次男で盲目ゆえ仏門に入っていた海野信親(竜芳)は、息子の顕了信道を逃した後、自刃した。信道の系統は大久保長安の業績に絡み、数奇な運命を辿りながらも後世にその血脈を伝えている。

3月21日に織田信長は諏訪に到着し、北条氏政の使者から戦勝祝いを受け取った。3月23日と3月29日には参加諸将に対する論功行賞が発表された。

滝川一益:上野一国、小県郡・佐久郡
河尻秀隆:穴山梅雪本貫地を除く甲斐一国、諏訪郡(穴山替地)
徳川家康:駿河一国
木曾義昌:本領(木曾谷)安堵、筑摩郡・安曇郡
森長可:高井郡・水内郡・更科郡・埴科郡
毛利長秀:伊那郡
穴山梅雪:本領(甲斐河内)安堵、嫡子・勝千代に武田氏の名跡を継がせ、武田氏当主とすることが認められた
森蘭丸:美濃兼山城(長可の旧居城)
団忠正:美濃国岩村城(秀隆の旧居城)
一益は「安土名物」と言われた茶器の「珠光小茄子」を所望していたとも言われ、「茶の湯の冥加が尽きてしまう」と嘆いていたとも言われている。また関東管領、もしくはそれに準ずる権限の役に就いたとも言われている。(『信長公記』では「関東八州の御警固」「東国の儀御取次」、『伊達治家記録』では「東国奉行」、『甫庵信長記』と『武家事記』では「関東管領」と呼称されている。以上『信長軍の司令官 武将たちの出世競争』谷口克弘:著、中公新書より)。北条氏政は「駿河でひとかどの働きをした」という評価を得たものの、これといった恩賞はなかった。

4月に入り織田信長は甲斐に向かい、その途中の台ヶ原(北杜市)で、生涯初めて富士山を見たとされる。4月3日には、武田氏歴代の本拠である躑躅ヶ崎館の焼け跡に到着した。一方、織田信忠勢は武田残党の追討を開始し、残党が逃げ込んだ恵林寺(甲州市)を包囲。残党を引き渡すよう要求したが寺側は拒否した。織田信忠は寺を焼き討ちし、寺の和尚である快川紹喜は「心頭滅却すれば火も自ら涼し…」という辞世を残し炎の中に消えた。

この他にも諏訪刑部・諏訪采女・段嶺某・長篠某といった者たちを農民を使って殺させ、その首が織田方へと献上された。これに対して黄金を下したため、これを見た農民たちは武田方の名のあるものを探して殺し、その首を織田方に献上した。
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逆に徳川家康は、残党狩りの命を無視し、先述のように武田の遺臣たちを密かに匿った。これら人材は後の天正壬午の乱や軍制再編などで大いに貢献した。

4月10日に織田信長は甲府を出発し、東海道遊覧に向かった。4月13日に江尻(静岡市清水区)、16日に浜松へ到り、21日に安土城に凱旋した。

海津城に入った長可は近隣諸将を鎮撫し、上杉景勝の侵入を防ぎつつ、一方では上杉氏への攻勢を強めていた。5月27日には柴田勝家らの北国勢の支援のために信越国境を越えて、春日山城を指呼の間に望む越後の二本木(上越市)辺りまでに乱入。その報を受けた上杉景勝は急遽、春日山城に引き返す必要に迫られることとなった。しかし、本能寺の変で信長が討たれると、森長可は海津城を捨て本領地に逃げ帰り、河尻秀隆は武田旧臣の一揆により落命することとなった。そのため、武田遺領は一時的に政治的・軍事的空白状態となった。

滝川一益、北条氏政のその後の動きは神流川の戦いを、徳川家康、氏政、真田昌幸のその後の動きは天正壬午の乱を参照されたい。

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2009年06月06日 07:34に投稿されたエントリーのページです。

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